一観客の期待

未知の新しい世界に接しさせてくれたり、膨大な資料や綿密な調査に基づいた著者の知識量や勉強量、それらを破綻無く説得力を持たせた上でストーリーに仕立て上げる力量、そして推敲を重ねた文章に触れる事は読書の醍醐味だと思います。

そういった意味で言うと安部晋太郎さんの『美しい国へ』は普段テレビで報道されている彼の言動、その他国内外のニュースに注目している人にとっては新しい発見も少なく、逆に調査不足の部分もあったり彼がおそらくは秘めているであろう政治活動への深い洞察や思い、原動力が垣間見られることもあまりなく期待はずれと感じる人がいるというのもある意味理解できる気もします。

そう考えるとああダンスも一緒だなぁと思います。
例えば優れたSFを読むと難しそうな専門用語や科学的仮定・仮説などが並んでいますが、科学的な知識など全く無い私でもなんとなく分かったような気になるように筋が進みます。推理小説ではご都合主義的なストーリー展開よりも必然を重ねた展開に納得させられます。

読者である私達は何の苦労も無く読み進みますが著者の準備、生み出されたオリジナリティー溢れるストーリー、そして文章力に感嘆するわけです。

ダンスを傍から見ると、見た目の勢いのある動きやきれいな形などが主に注目を引きます。もちろんそれは大切な要素です。が、シンプルに見えるダンスも音楽への共鳴や全身の筋肉の使い方、二人が一体になって踊るための技術など深い考察や経験、理解、パートナーへの思い遣りがそのパフォーマンスに感動を与えるのだと思います。

それらを得るためには時間をかけた試行錯誤が必要だと思います。その時間は意外と長いし苦しいときもあるかと思います。手がかりを与えてくれるアドバイス、発見する何らかのきっかけも必要だと思いますが求めていなければ手には入らないでしょう。

今は思ったようにいかないダンサーの皆さんも是非ダンスの本質に少しでも近づけるように精進してほしいと思います。見ている私達に感動と夢を与えてほしいと思っています。全関東選手権、B級戦、東京選手権頑張ってください。

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