竜の卵 ロバート・L.フォワード・著 /山高昭・訳
『竜の卵』は2020年に竜座の尻尾付近で発見された自転周期毎秒5回の中性子星です。直径は約20km、地表での重力場は670億G。
その中性子星上に芽生えた知的生命体『チーラ』と人類のファーストコンタクト物。
『チーラ』の平均寿命は37分。昼も夜も無く活動し、体重は人類とほぼ同じだが大きさは約体長5ミリ、体高0.5ミリ、目は12個。
『竜の卵』に調査の為向かったピエール・ニーブン一行は2050年この生命とコンタクトを果たします。人類とチーラの間には100万対1の時間感覚の差があります。人生(?)のサイクルの回転数がチーラのほうが100万倍早いのです。
生活環境も頭の回転数も全く異なるピエールとチーラの代表者クリアー=シンカーの対面の場面ではその方法やクリアー=シンカーの苦行のような努力など趣向を凝らしていてなかなか楽しめます。
ピエールたち調査隊は、人類の持つ科学知識を「竜の卵」へと送信します。その知識を吸収し、持ち前の回転数で初めのコンタクトから24時間も経たないうちにチーラは科学力は人類のそれを凌駕します。
その成果をチーラは人類に送信しますがそのほとんどは暗号化されており解読する為には人類の科学が自分の力で発達し、その暗号を解かなければなりません。それが人類が自力で進歩し、学んでいくために良いというチーラたちの配慮です。
この件もとても好感が持てますね。チーラは科学的進歩のきっかけを与えてくれた人類に感謝しつつさらに人類のことを考えているといった趣です。
読み始めたはじめのうちは退屈に感じる部分も有りましたが後半になって展開、興味共に加速していく作品でした。SF好きに超お勧め。